夏のまちのセミ:種類と鳴き声、抜け殻の観察
夏の訪れを告げる声:まちのセミを観察する
夏が近づくと、まちの緑地や公園、街路樹などから賑やかな声が聞こえてきます。これは、都市の夏の風物詩であるセミたちの活動が活発になる証拠です。セミは私たちの暮らしのすぐそばにいる、観察しやすい身近な昆虫の一つと言えます。
この記事では、夏のまちで見られる代表的なセミの種類や、彼らの鳴き声の特徴、そして観察の楽しみ方についてご紹介します。都市環境に適応して生きるセミたちの世界に触れてみましょう。
まちでよく見られるセミの種類と特徴
日本には多くの種類のセミが生息していますが、都市部で一般的に出会えるのは限られています。それぞれのセミは、見た目や鳴き声、活動する時間帯などに特徴があります。
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アブラゼミ 最も身近なセミの一つで、茶色く半透明の翅(はね)を持っています。都市部の公園や街路樹など、様々な場所で見られます。鳴き声は「ジージージー」と油が揚がるような音に例えられ、朝から夕方にかけて活発に鳴きます。
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ミンミンゼミ 透明な翅を持ち、アブラゼミよりもやや大型のことが多いセミです。「ミーンミンミンミンミー」という澄んだ高い声で鳴きます。主に明るい時間帯に鳴き、都市部では緑豊かな場所で見かけることがあります。
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ツクツクボウシ 小型のセミで、夏も終わりに近づく頃に多く現れます。鳴き声は「ツクツクオーシ、ツクツクオーシ…」とだんだん早くなり、最後は「ジー」と終わる特徴的なパターンです。この鳴き声を聞くと、夏の終わりを感じる方も多いかもしれません。
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ニイニイゼミ 比較的小型で、翅が不透明で泥に覆われていることが多いのが特徴です。早い時期から鳴き始め、「チーチーチー」という連続した声を出します。木の幹に近い場所を好む傾向があります。
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クマゼミ 南方系のセミですが、近年の都市化による温暖化や緑化によって、関東地方などでも分布を広げています。大型で、力強い「シャンシャンシャン」という声で鳴きます。比較的暑い時間帯によく鳴く傾向があります。
これらのセミは、生息環境や季節によって見られる種類や数が異なります。自宅の周辺やよく行く公園などで、どのようなセミがいるか観察してみるのも面白いでしょう。
鳴き声からセミの種類を判別する
セミの鳴き声は、種類によって異なります。耳を澄ませて鳴き声の違いに注目すると、そこにどのようなセミがいるかを知る手がかりになります。
例えば、朝早くから聞こえる大きな「ミーンミンミン」はミンミンゼミ、「ジージージー」はアブラゼミであることが多いです。真夏の日中に響く「シャンシャン」はクマゼミの可能性が高く、夏の盛りが過ぎた頃に聞こえ始める「ツクツクオーシ」はツクツクボウシです。木の幹で控えめに「チーチー」と鳴いているのはニイニイゼミかもしれません。
時間帯や場所によって鳴いているセミが変化する様子を観察するのも興味深い自然観察です。
セミの抜け殻を探してみよう
セミの観察で、比較的容易に、そしてじっくりと楽しめるのが「抜け殻」探しです。セミの幼虫は地中で数年から長いものでは十数年も過ごし、地上に出てきて成虫になる際に古い殻を脱ぎ捨てます。これが抜け殻です。
抜け殻は、木の幹や葉の裏、建物の壁や網戸など、様々な場所で見つけることができます。特に、羽化のために木を登った跡をたどっていくと、抜け殻が見つかることがあります。
抜け殻の形や大きさ、表面の模様などをよく観察すると、それがどの種類のセミの抜け殻か判別できる場合があります。例えば、アブラゼミの抜け殻は比較的しっかりしており、ニイニイゼミの抜け殻は泥が付着していることが多いなど、種類ごとの特徴があります。図鑑やインターネット上の情報と照らし合わせて、見つけた抜け殻の「持ち主」を特定してみるのも楽しい作業です。
親子で楽しむセミ観察のヒント
セミの観察は、特別な道具がなくても気軽に始められるため、親子での自然観察にぴったりです。
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耳で楽しむ:鳴き声クイズ 聞こえてくるセミの鳴き声が、どの子の声かを当てるクイズ形式で楽しんでみましょう。「今の声は誰かな?」「さっきの声と違うね」などと話しながら聞くと、セミの種類ごとの鳴き声の違いに気づきやすくなります。鳴き声を録音して後で聞き比べるのも良いでしょう。
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目で楽しむ:抜け殻コレクション 公園などで見つけた抜け殻を集めてみるのも良い経験です。ただし、自然の一部ですので、持ち帰る場合は数を限ったり、観察が終わったら元の場所に戻したりするなど、自然への配慮を忘れないようにしましょう。持ち帰った抜け殻を、ノートに貼り付けたり、スケッチしたりして記録するのも素晴らしい活動です。
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早朝の観察に挑戦:羽化を見守る もし可能であれば、早朝に木や壁を登っているセミの幼虫を探し、羽化の様子を観察してみるのも感動的な体験です。ただし、羽化は夜から早朝にかけて行われることが多く、場所によっては見つけるのが難しい場合もあります。また、観察する際は、セミに触れたり、邪魔をしたりしないよう、静かに見守ることが重要です。
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記録を残す:観察ノートや写真 観察した場所、日付、時間、天気、見つけたセミの種類(鳴き声や姿から)、抜け殻の様子などを記録するノートをつけてみましょう。写真やイラストで記録を残すと、後で見返したときに発見が多くあります。
観察を行う際は、周囲の安全に注意し、熱中症対策をしっかり行ってください。また、セミを捕まえたり、飼育したりする場合は、その生態や扱い方に十分配慮し、観察が終わったら元の場所に戻すなど、生き物への敬意を持って接することが大切です。
まとめ
夏のまちに響くセミの声は、都市に暮らす私たちにとって、自然の存在を強く意識させてくれるものです。少し立ち止まって耳を澄ませたり、足元の抜け殻に目を向けたりするだけで、身近な場所にいるセミたちの多様な世界に気づくことができます。
セミの観察を通して、生命の営みや都市の自然環境について学ぶ良い機会となるでしょう。ぜひ、親子で一緒に、夏のまちのセミ観察を楽しんでみてください。そして、そこで見つけた発見を「まちの自然発見ひろば」に投稿し、皆さんと共有していただければ幸いです。