まちの壁や塀は生き物の宝庫:隠れた世界を観察するヒント
まちの壁や塀に隠された生き物の世界
私たちの暮らすまちには、ビルや住宅、公園の塀など、さまざまな壁や塀があります。これらは単なる構造物に見えますが、実は多くの生き物にとって、隠れ家となったり、移動経路になったりする大切な場所です。普段何気なく通り過ぎている場所でも、少し立ち止まって観察してみると、驚くほど多様な生き物が活動している様子を発見できます。
この壁や塀を舞台にした生き物の観察は、親子で手軽に始められる都市の自然観察の一つです。特別な場所へ出かけなくとも、自宅の庭や近所の道端、公園などで実践できます。
なぜ壁や塀は生き物を惹きつけるのか
壁や塀が多くの生き物を惹きつけるのには、いくつかの理由があります。
まず、隠れ場所や休息場所としての役割です。外敵から身を隠したり、強い日差しや雨風を避けたりするために、壁の隙間や裏側、塀の茂みなどが利用されます。
次に、移動経路としての側面です。特定の生き物は、地面を移動するよりも壁や塀を伝って移動することを好む場合があります。また、壁面に沿って伸びる植物は、移動する生き物にとって道標や足場となります。
さらに、壁や塀の種類や向きによっては、特定の環境条件が生まれます。例えば、日当たりの良い壁は日向ぼっこに適した場所となり、湿った壁面には乾燥に弱い生き物やコケなどが生育しやすくなります。街灯の近くの壁には、夜間に光に集まる昆虫を狙って捕食者が集まることもあります。
壁や塀で見られる主な生き物
壁や塀では、多種多様な生き物に出会う可能性があります。代表的なものをいくつかご紹介します。
- 昆虫やその仲間: クモが巣を張っていたり、ヤスデやムカデが湿った場所に隠れていたりします。夜にはガの仲間が壁に止まっていることもよくあります。アリが壁を縦横無尽に行き来している様子や、カメムシの仲間が植物の茎に止まっている姿も見られます。
- カタツムリやナメクジ: 湿度を好むこれらの生き物は、雨上がりや湿った壁面、北側の壁などでよく見かけられます。
- 両生類・爬虫類: 都市部でもよく見られるヤモリや、場所によってはカナヘビが壁面やブロック塀の上で日向ぼっこをしていたり、虫を捕まえたりしている姿を観察できることがあります。
- 鳥類: ツバメが巣を作る場所として壁の軒下などを利用することはよく知られています。また、スズメやハトなどが壁や塀の上で休憩したり、周りの様子を伺ったりしています。
- 植物: コンクリートの隙間やブロックの間に、コケや地衣類が生えているのをよく見かけます。これらは乾燥に強く、わずかな水分と栄養で生育できます。また、塀に沿ってツル植物が伸びていたり、塀の上の隙間に風で運ばれた種子が根付いて小さな草花が咲いていたりすることもあります。
壁や塀の観察をさらに楽しむヒント
壁や塀の自然観察をより豊かにするためのヒントをいくつかご紹介します。
- 時間帯を変えて観察する: 朝、昼、夜で活動する生き物は異なります。日中に活発なチョウやハチ、トカゲがいる一方で、夜になるとガやヤモリ、特定のクモなどが活動を始めます。
- 場所を変えて観察する: 日当たりの良い場所、日陰の場所、湿った場所、乾燥した場所、街灯のある場所など、環境が少し違うだけで見られる生き物は変わってきます。様々な壁や塀で観察してみてください。
- 細部に注目する: 肉眼での観察に加え、ルーペを使ってみましょう。昆虫の体のつくりやコケの繊細な形など、肉眼では見えない世界が広がります。
- そっと静かに観察する: 生き物は敏感です。急な動きや大きな音は避け、静かに観察することで、自然な姿を見ることができます。
- 安全に注意する: 高い場所は危険ですので無理に観察しないでください。また、生き物を捕まえたり触ったりする際は、毒を持つものや病原菌を持っている可能性も考慮し、慎重に行動してください。基本的には観察にとどめるのが安全です。
発見を記録し、共有する
観察で新しい発見があったら、写真に撮ったり、観察ノートにスケッチしたりして記録に残しましょう。見つけた生き物の名前を図鑑やインターネットで調べてみるのも面白い取り組みです。
そして、「まちの自然発見ひろば」では、皆さんの発見をぜひ共有してください。壁や塀でこんな生き物を見つけた、こんな面白い行動をしていた、といった投稿は、他の読者の方々にとって新たな観察のヒントとなります。写真と一緒に投稿すると、より発見の喜びを伝えやすくなります。
まとめ
普段見過ごしがちなまちの壁や塀は、実はたくさんの生き物にとって重要な場所であり、都市の自然の多様性を感じられる素晴らしい観察フィールドです。親子で一緒に壁や塀の小さな世界を覗いてみてください。きっと新しい発見や驚きがあるはずです。そして、その発見をぜひこのひろばで共有し、皆で学び合いましょう。