まちの生き物は何を食べている?観察のヒント
まちの生き物の「食」を観察する楽しみ
私たちの暮らすまちにも、様々な生き物たちが息づいています。公園の木々、道端の草むら、住宅街の庭先やベランダに至るまで、小さな自然が広がっています。これらの生き物たちは、それぞれが何かを食べて生命を維持しています。何をどのように食べているのかに注目することで、普段とは違う視点からまちの自然の営みを知ることができます。
生き物の「食」を観察することは、その生物の生態や、周囲の環境との関わり、さらには都市という特殊な環境での適応戦略を理解する手助けとなります。親子で一緒に、身近な場所で「食べる」という生物の基本的な活動を探してみましょう。
都市で見られる「食べる」観察のポイント
都市で見られる生き物の「食」は多岐にわたります。いくつかの代表的な例と、観察のヒントをご紹介します。
1. 植物を食べる生き物
最も観察しやすいのは、植物を食べる生き物でしょう。
- 葉や茎を食べる昆虫: アオムシ(チョウやガの幼虫)、バッタ、テントウムシの幼虫(アブラムシを食べる肉食のナナホシテントウを除く)など、様々な昆虫が植物の葉や茎を食べています。葉にかじられた跡や、糞を探すと、近くに犯人が見つかることがあります。特定の植物にしかつかない昆虫もいます。
- 花の蜜や花粉を食べる昆虫: チョウ、ハチ、アブなどは、花の蜜や花粉を重要な食料としています。様々な花を訪れる様子を観察することで、どの昆虫がどの花を好むのかを知ることができます。
- 種子や果実を食べる鳥: スズメやハト、ツグミなどの鳥は、街路樹の種子や、落ちている木の実などを食べます。鳥が木の実をついばむ様子や、地面で何かを探してついばんでいる様子を観察してみましょう。
- 樹皮や材を食べる昆虫: カミキリムシの幼虫などは樹の材を食べます。木の幹に開いた穴や木屑が見られることがあります。
- 土の中の根や枯葉を食べる生き物: ミミズやダンゴムシ、ワラジムシなどは、枯れた植物や土の中の有機物を分解して食べています。植え込みの地面をそっと掘り返したり、植木鉢の下を見たりすると見つかることがあります。
観察のヒント:
- 植物の種類に注目しましょう。特定の植物だけが食べられていることがあります。
- 食痕(食べた跡)や糞を探すと、隠れている生き物を見つける手がかりになります。
- 時間帯によって活動する生き物が違うこともあります。
2. 他の動物を食べる生き物(捕食者)
都市にも、他の生き物を捕まえて食べる捕食者がいます。
- 昆虫を捕まえるクモ: 様々な場所に巣を張り、通りかかった昆虫を捕らえて食べます。クモの巣にかかった獲物を処理する様子は興味深い観察対象です。
- 他の昆虫を捕まえるカマキリやトンボ: カマキリは待ち伏せ型、トンボは飛翔しながら、他の昆虫を捕まえます。捕食の瞬間を観察できると感動的です。
- ミミズや昆虫を食べる鳥: ツグミなどが地面をつついてミミズを探したり、ムクドリなどが昆虫を捕まえたりする様子が見られます。
- カエルやヤモリ: 小さな昆虫などを捕らえて食べます。夜に街灯の下などで見られることもあります。
観察のヒント:
- 捕食者は獲物がいそうな場所(花壇、草むら、水辺、街灯の下など)に注意して探してみましょう。
- 捕食の瞬間は短いことが多いので、辛抱強く観察を続けることが大切です。
3. 腐ったものや排泄物を食べる生き物(分解者やスカベンジャー)
自然界では、死んだ生物や排泄物も無駄になりません。これらを栄養にする生き物がいます。
- 枯葉や動物の死骸を分解する昆虫など: ハエの幼虫(ウジ)、シデムシ、また前述のミミズやダンゴムシも枯れた有機物を食べます。
- 動物の排泄物を食べる昆虫: フンコロガシの仲間など(都市では少ないかもしれませんが、探すといるかもしれません)。
観察のヒント:
- 落ち葉の積もった場所や、少し湿った場所を探してみましょう。
- これらの生き物は分解者として、自然の循環に重要な役割を果たしています。
観察を楽しむためのアイデア
- 「食卓」マップ作り: 公園や庭など、特定の場所で、どのような生き物が何を食べていたかを地図に書き込んでみましょう。
- 「食べる・食べられる」リスト作成: 観察できた生き物について、「〇〇は△△を食べていた」というリストを作成します。これは簡単な食物連鎖の図になります。
- 写真を撮る: 食べる様子や、食べられた植物の様子を写真に記録します。
- 絵や文章で記録する: 観察ノートを作成し、絵を描いたり気づいたことを書き込んだりするのも良いでしょう。
- 図鑑で調べる: 観察した生き物や植物の名前、食性などを図鑑やインターネットで調べてみましょう。
安全な観察のために
生き物の観察は楽しいものですが、安全への配慮も重要です。
- ハチの中には刺す危険のある種類もいます。巣には近づかず、刺激しないように距離をとって観察しましょう。
- 野犬や地域によってはタヌキなど哺乳類が出る場合もあります。むやみに近づかないでください。
- 植物の中には触るとかぶれるものや毒を持つものもあります。よくわからない植物は素手で触らないようにしましょう。
- 観察に夢中になりすぎて、車や自転車などに注意を払うことを忘れないようにしてください。
まとめ
まちの身近な場所で、生き物が「何を食べているか」という視点で自然を観察することは、都市に暮らす多様な生物たちのつながりや、たくましい生き方を学ぶ貴重な機会となります。今回ご紹介したヒントを参考に、ぜひ親子で一緒に、まちの自然の「食」の世界を探検してみてください。新たな発見がきっとあるはずです。そして、見つけた発見はぜひ「まちの自然発見ひろば」で皆さんと共有していただければ幸いです。