まちで探すチョウの食草:幼虫が見つかる植物の観察
まちでチョウを観察する新たな視点:食草の重要性
都市の公園や道端、庭先など、私たちの身の回りでも様々なチョウの姿を見かけることができます。ヒラヒラと舞う成虫の姿は多くの人々にとって馴染み深いものですが、チョウはその一生のうち、卵、幼虫、蛹、そして成虫と姿を変えていく昆虫です。特に、卵から孵化した幼虫は、特定の植物の葉を食べて成長します。この、幼虫が食べる特定の植物のことを「食草(しょくそう)」と呼びます。
チョウの種類によって食べる植物は決まっており、多くの場合、ごく限られた種類の植物しか食べることができません。これは、チョウが進化の過程で特定の植物が持つ化学物質に対応できるようになり、逆にそれ以外の植物を食べられなくなったためと考えられています。食草を知ることは、チョウの生活や生態を深く理解するための重要な手がかりとなります。成虫だけでなく、幼虫の姿を探したり、卵や蛹を見つけたりすることにもつながります。
身近なチョウと食草の関係
都市部でも比較的よく見られるチョウには、それぞれお気に入りの食草があります。いくつか例を挙げてみましょう。
- モンシロチョウ: キャベツやアブラナなど、アブラナ科の植物を広く食草とします。都市部では、道端や空き地に生えるオオイヌノフグリやナズナなども食草となります。
- アゲハチョウ: ミカンやサンショウ、カラタチといったミカン科の植物を食草とします。庭にミカン類がある家では、アゲハチョウの幼虫を見つけやすいかもしれません。
- ツマグロヒョウモン: パンジーやビオラ、スミレなど、スミレ科の植物を食草とします。園芸植物として人気のスミレ類が食草となるため、公園の花壇などで幼虫が見つかることがあります。
- ルリシジミ: カタバミ、シロツメクサ、フジなど、マメ科やカタバミ科の植物を食草とします。都市部では、道端や公園に広く分布するカタバミが重要な食草となります。
- ヤマトシジミ: カタバミ科のカタバミを主に食草とします。ルリシジミと同様に、カタバミが生えている場所を探すと見つかる可能性が高いです。
これらの例からもわかるように、私たちが普段見過ごしがちな身近な植物が、チョウの幼虫にとってかけがえのない食料資源となっているのです。
まちで食草を探すヒント
チョウの食草探しは、都市の自然を観察する上でとても面白い活動です。どこで探せば良いのでしょうか。
- 公園の草地や植え込み: 様々な植物が植えられている場所や、手入れの行き届いていない草地には、チョウの食草となる野草が生えていることがあります。
- 道端や空き地: 思わぬ場所に、たくましく育つ野草が見つかります。モンシロチョウの食草となるアブラナ科の植物や、ヤマトシジミ・ルリシジミの食草となるカタバミなどは、このような場所でよく見られます。
- 庭やベランダ: 自宅の庭やベランダで育てている植物が、実はチョウの食草であることもあります。特にミカン科の植物やスミレ類は、アゲハチョウやツマグロヒョウモンが卵を産みに来る可能性があります。
- 河川敷や土手: 少し郊外に足を延ばせる場合は、より多様な植物が生えており、様々なチョウの食草が見つかることがあります。
特定のチョウを探したい場合は、まずそのチョウの食草を調べてから探すと効率的です。逆に、特定の植物を見つけたら、「この植物はどんなチョウの食草かな?」と調べてみるのも良いでしょう。
食草の上で幼虫を探す・観察するポイント
食草が見つかったら、次にその植物の葉や茎をじっくり観察してみましょう。幼虫がいるかどうかは、いくつかのサインから判断できます。
- 食べ跡: 葉っぱに虫が食べた痕跡がないか探します。葉の縁が食べられていたり、穴が開いていたりします。チョウの幼虫は葉の柔らかい部分を好むことが多いです。
- 糞: 幼虫は植物を食べた後に糞をします。チョウの幼虫の糞は、小さく丸い粒状であることが多いです。葉の上や株元に黒っぽい粒が落ちていないか探してみましょう。
- 幼虫本体: 食草の葉の上や茎に幼虫が止まっていることがあります。種類によって色や形は様々ですが、多くの場合、葉っぱによく擬態しているため注意深く探す必要があります。
幼虫を見つけたら、その姿をじっくり観察してみましょう。どんな色や形をしているか、どのように葉を食べているか、どのように移動するかなど、様々な発見があるはずです。写真やスケッチで記録を残すことも、後で見返したり他の人と共有したりする上で役立ちます。
観察する際は、幼虫を無理に触ったり、生息環境から持ち帰ったりすることは避けましょう。自然のままの姿を観察することが大切です。また、植物によってはかぶれるものや毒を持つものもありますので、植物に触れる際は図鑑などで確認するか、慎重に行うようにしてください。
親子で楽しむ食草観察のアイデア
食草探しと幼虫観察は、親子で一緒に楽しめる素晴らしい自然観察活動です。
- 探偵ゲーム: 「この葉っぱを食べた犯人は誰かな?」「この植物はどんなチョウさんが好きなんだろう?」といった問いかけをしながら、一緒に探偵になった気分で観察を進めてみましょう。
- 観察記録: ノートに日付、場所、見つけた植物の名前、幼虫の様子などを記録します。写真を撮ったり、幼虫のスケッチをしたりするのも良い経験になります。幼虫が成長していく様子を継続して観察できれば、より深い学びにつながります。
- 図鑑活用: 見つけた植物や幼虫の名前を図鑑やインターネットで調べる時間を設けます。知的好奇心を刺激し、さらに興味を深めるきっかけになります。
- 関連情報を調べる: 見つけたチョウの成虫の姿や、他の時期の様子(卵、蛹)について調べてみるのも面白いでしょう。食草だけでなく、成虫が蜜を吸う花(蜜源植物)についても調べてみると、チョウの一生をより立体的に理解できます。
- 発見の共有: 見つけたことや感じたことを家族で話し合ったり、「まちの自然発見ひろば」のコミュニティに投稿したりして、発見を共有してみましょう。他の参加者の投稿から新たな観察のヒントを得ることもできます。
まとめ
都市で見られるチョウの多くは、私たちの身近にある特定の植物を食草として利用しています。食草を知ることで、これまで見過ごしていた足元の自然の中に、チョウの幼虫がたくましく生きている姿を発見することができます。
チョウとその食草の関係を観察することは、生き物と植物、そしてそれを取り巻く環境とのつながりを理解する上で非常に有益です。ぜひ、親子で身近な植物に注目し、チョウの隠された暮らしを探してみてください。きっと、新たな発見と驚きがあるはずです。そして、見つけた発見はぜひ「まちの自然発見ひろば」で共有していただければ嬉しく思います。